「朝起きたとき、口の中がネバネバする」
「硬いものが、なんとなく食べにくくなった」
「お茶がないと、パンやクッキーが飲み込みづらい」
年齢を重ねる中で、ふと感じるこんなお口の変化。これらは決して気のせいではなく、体と同じように、お口の中も年齢とともに変化しているサインです。
これらは誰にでも起こりうる自然な変化ですが、「もう年だから仕方ない」と放置してしまうと、虫歯や歯周病の急増や、食事の楽しみが失われるなど、生活の質を大きく下げるトラブルにつながりかねません。
今回は、なぜ年齢とともにお口のトラブルが増えるのか、その原因と、これからの人生を健康に楽しむための「大人の口腔ケア」について詳しく解説します。
年齢とともに、お口の「防御力」は低下していく
若い頃はそれほど意識しなくても大きなトラブルがなかったのに、なぜ年齢とともにお口の悩みは増えるのでしょうか。それは、お口が本来持っている「防御機能」が、加齢とともに少しずつ弱まってしまうからです。
防御力の低下①:歯ぐきが下がり、”無防備な歯”が露出する
長年の歯磨きの癖や歯周病の進行により、歯ぐきは少しずつ下がってきます(歯肉退縮)。すると、本来は歯ぐきに守られていた歯の根っこ部分(象牙質)が露出してしまいます。
歯の表面(エナメル質)が鎧のように硬いのに対し、この象牙質は非常に柔らかく酸に弱いのが特徴です。そのため、露出した根の部分は虫歯菌の攻撃にひとたまりもなく、あっという間に「大人の虫歯(根面う蝕)」になってしまいます。
防御力の低下②:”天然の洗口液”である唾液が減少する
唾液は、単なる水分ではありません。お口の中の汚れを洗い流し(自浄作用)、細菌の活動を抑え(抗菌作用)、食事で酸性に傾いたお口の中を中性に戻し、歯の修復を助ける(再石灰化作用)など、多くの重要な役割を担う”天然の洗口液”です。
しかし、加齢や服用している薬の副作用、噛む筋力の低下などによって唾液の分泌量は減少します。いわゆる「ドライマウス(口腔乾燥症)」の状態になると、この防御機能が著しく低下し、虫歯や歯周病が急速に悪化したり、強い口臭の原因になったりします。
見えない場所に潜む「過去の治療」という時限爆弾
年齢を重ねるほど、過去に治療した詰め物や被せ物がお口の中にある方は多くなります。これらは永久的なものではなく、見えないリスクを抱えています。
どんなに精密に作られた詰め物でも、経年劣化によって歯との間にわずかな隙間が生まれます。そのミクロの隙間から細菌が侵入し、内部で静かに虫歯が再発するのです。これを「二次う蝕(二次カリエス)」と呼びます。
この虫歯は内部で進行するため、痛みなどの自覚症状が出にくく、気づいた時には神経を抜くような大きな治療が必要になるケースも少なくありません。
食事の楽しみを奪う、味覚や口内環境の変化
・味が分かりにくくなる
唾液が減り、お口の中が乾燥すると、舌の表面に「舌苔(ぜったい)」と呼ばれる白や黄色の苔のようなものが付着しやすくなります。これが味を感じるセンサー(味蕾)を覆い隠してしまい、「味が薄く感じる」「何を食べても美味しくない」といった味覚の変化を引き起こします。
・入れ歯の不具合
入れ歯を使用している場合、合わない入れ歯を我慢して使い続けると、痛みはもちろん、粘膜に口内炎ができたり、残っている健康な歯や顎の骨に過剰な負担をかけたりする原因となります。
未来の健康を守る「大人の口腔ケア」3つの新習慣
加齢によるお口の変化に対応するには、若い頃と同じケアでは不十分です。日々のケアを「大人仕様」にアップデートしましょう。
新習慣①:歯間ケアを“主役”に
歯ブラシだけで落とせる汚れは、全体の約60%と言われています。残りの40%は、歯と歯の間に潜んでいます。特に歯ぐきが下がって隙間が大きくなった大人の歯には、デンタルフロスや歯間ブラシを使った歯間ケアが不可欠です。「歯磨きのついで」ではなく、歯磨きと同じくらい重要なケアとして、毎日の習慣にしましょう。
新習慣②:お口の「保湿」を意識する
お口の乾燥を感じる方は、保湿成分の入った洗口液や、口腔保湿ジェル、スプレーなどを活用して、積極的にお口の中の潤いを保ちましょう。こまめな水分補給も非常に重要です。また、舌苔が気になる場合は、舌専用のクリーナーで優しく奥から手前にかき出すように清掃するのも効果的です。
新習慣③:「かかりつけ歯科医」でのプロケア
セルフケアではどうしても落としきれない細菌の塊「バイオフィルム」は、専門的な器具でしか除去できません。定期的に歯科医院でクリーニングを受けることは、虫歯や歯周病の予防はもちろん、全身の健康を守ることにも繋がります(特に誤嚥性肺炎のリスク低減に有効です)。
お口の健康は、「よく噛んで、美味しく食事をし、楽しく会話する」という、豊かな人生の土台そのものです。「もう年だから…」と諦めるのではなく、今の状態に合わせた適切なケアを始めるのに、遅すぎることはありません。
気になる変化や不安なことがあれば、どんな些細なことでもご相談ください。
明石市、西明石駅徒歩1分の歯医者
にしあかし歯科 Tel:078-925-3333
2025年10月7日 カテゴリ:ブログ